| 「MISTER LONELY」 -「MISTER LONELY」から「YOU ARE NOT ALONE」へ- |
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 ※以下、ネタバレ注意!!
ガンモには、ウサギの耳の付いた被り物をした上半身裸の少年が登場する。 彼の存在は、まるでファンタジーから飛び出してきたような、現実において大変違和感のあるキャラクターとして感じられる。 しかし、どうだろう。 この映画を見続けるうち、われわれは別の印象を抱き始める。
猫を殺して売りさばく少年たち、乳房に張り付けたテープを引き剥がし快感を貪る少女、知恵おくれの売春婦、小人症の黒人に涙ながらに甘える白人のゲイ。
現実に生きるこうした人々の日常のなんと現実感のないことか!
ウサギの少年より彼らの存在のほうがよほど現実味に欠ける、おとぎ話のような様相を呈してくる。
ミスターロンリーにおいては、その作品構造が、このような世界観の転倒を表現するものとして機能している。 つまり、何が現実で何が虚構なのか、その関係を反復させ、現実-虚構、本当-嘘、ホンモノ-ニセモノという関係のリフレインによって、2つの境界を不分明にさせていく。 それはモノマネ芸人たちとそのモノマネの対象となる有名人との関係であり、モノマネ芸人とそれを演じる映画に出演する役者との関係であり、パラシュート無しでの奇跡のスカイダイビングと敬虔なシスターとの関係であり、それらの舞台となっているこの映画とわれわれ観賞者との関係である。
ということは、モノマネ芸人やシスターや勝利に酔いしれるパリの群衆とは、この映画に人生の深い絶望とささやかな希望を感じさせらる、われわれのことではなかったか。 事実、映画のエンディングと共に、彼らの辿った道とと同様、われわれも映画という夢から醒めるのである。
しかし、なんといっても、エンディングには、感動を覚えずにはいられない。
夕刻のオレンジ色の陽光に照らされて煌めく波打ち際、墜落し炎上するセスナ機の傍らでスカイブルーの衣装を纏ったシスターたちの死体が打ち寄せられるシーンの、全ての終わりを告げるような静謐とした美しさといったら!!!
不思議なことに、このシーンとは正反対であるはずの、生の歓喜に満ちたパラシュート無しの奇跡のダイブシーンに、同趣の感動を覚えてしまうのが面白い。
この映画で示されるささやかな希望とは、絶望と隣り合わせのような逆説的な希望である。 つまり、誰しもが皆、何らかの虚構や物語にすがって生きていかざるを得ず、醒めてしまうことを初めから運命付けられている夢を見続ける孤独、まさにその孤独感こそを紐帯として繋がるような希望を余韻として残すのだ。 彼らも孤独、私も孤独、あなたも孤独、だからこそここに描かれる切なさに胸を打たれるのだし、同じように受け止め涙するあの人やこの人の姿が「YOU ARE NOT ALONE」を高らかに歌い上げているのだと。
結局のところ、切なくて、悲しくて、滑稽で、愛おしい人々の営みに対するハーモニー・コリンの優しい眼差しが、私は大好きなのだ。
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【2008/08/17 15:54】
映画
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